ラーンの大雑把な指示に従い、イシェが慎重に石畳を足踏みした。埃っぽい洞窟の奥深く、薄暗い光だけが彼らを照らし出す。巨大な石棺が鎮座し、その表面には精巧な模様が刻まれていた。純白に近い、まるで雪のように冷たい光沢を放つ石像が棺の四隅に配置され、厳かな空気を漂わせていた。
「よし、これで準備はいいぞ!」
ラーンの豪快な声は、この静寂を破り、イシェの耳に響き渡った。彼は興奮気味に剣を構え、棺に向かって歩み始めた。
「待て、ラーン!まだ確認が不十分だ」
イシェはラーンの背中に手を伸ばそうとしたが、既に彼は石棺の前に立っていた。
「なんだって?怖いのかな、イシェ?」
ラーンは嘲笑った。その瞳には、純白の光が反射していた。
「いいや、違うんだ…」
イシェは言葉に詰まった。何かを予感したような不吉な気持ちに襲われた。
その時、石棺の上から冷たい風が吹き出した。純白の光が渦巻き、棺の蓋がゆっくりと開いた。その瞬間、洞窟全体が眩しい光に包まれた。イシェは目をぎゅっと閉じた。そして、再び開けたとき、そこにはラーンの姿はなかった。
「ラーン!」
イシェが叫んだ。しかし、返ってくるのは、静寂だけだった。石棺からは、純白の光がゆっくりと消えていった。残ったのは、虚ろな空虚感だけだった。
テルヘルは冷静に状況を判断した。「イシェ、落ち着いて。ラーンの様子を見るため、棺の中を調べてみる必要がある。危険だが、私は行く」
イシェはテルヘルの言葉にうなずいた。しかし、彼の心には、純白の光が焼き付いた恐怖と共に、ラーンの笑顔が浮かんでいた。