ラーンが、埃まみれの剣を片手に遺跡の入り口を見つめていた。イシェが眉間にしわを寄せながら地図を広げている。「ここだな。ここには古代ヴォルダンの金庫があると噂されているらしい」とイシェは言った。「噂だけならいくらでもあるぞ。今回は本物だって信じていいんだろ?」ラーンはそう言って、剣を肩越しに担いだ。「あのテルヘルが言うなら間違いないだろう」イシェはため息をついた。「あの女には何か秘密がある気がするんだよな。ヴォルダンへの復讐って言うけど…一体何が起きたんだ? 」
遺跡の入口は崩れかけており、不安定な足場を慎重に進む必要があった。ラーンが先に進もうとするのをイシェが制した。「待てよ、ラーン。あの石畳、よく見てみろ」イシェは指で石畳を指さした。「ヴォルダンの紋章じゃないか? この遺跡はヴォルダンのものだった可能性が高いぞ。危険だぞ」ラーンはためらいながらも頷き、イシェの後を続いた。
奥深くまで進むにつれ、遺跡の空気は重く、不気味なものに変わった。壁には、奇妙な絵文字が刻まれており、ラーンの背筋が凍りついた。「ここには何か邪悪な力を感じないか?」とイシェが呟いた。「ああ、確かに…」ラーンは剣を握りしめ、周囲を見回した。
すると、突然、床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。「ラーン!」イシェの叫び声が響く中、ラーンは激しく落下し、意識を失った。目が覚めると、そこは広大な地下空間だった。天井から光が差し込み、中央には巨大な金庫が置かれていた。
金庫の上には、ヴォルダンの紋章が輝いており、その下に小さな文字が刻まれていた。「納税の証」。ラーンは混乱した。「納税?」イシェの声が聞こえた。「ラーン!大丈夫か? ここは一体…」イシェが駆け寄ると、ラーンの視線が金庫に向いていた。
「ここには何もないぞ」イシェはがっかりした顔で言った。「何かの罠かと思ったのに…」その時、金庫の側面に小さな穴が開き、中から小さな箱が出てきた。ラーンは箱を開けると、そこには一枚の地図と手紙が入っていた。手紙にはこう書かれていた。「ヴォルダンへの復讐を誓う者よ、真の財宝はここにあるわけではない。それは、ヴォルダンの支配から解放された人々の心の中に眠っているのだ」
ラーンは地図を見つめた。そこには、エンノル連合の国境を示す線が引かれており、その下に小さく「納税」と書かれていた。ラーンはイシェに言った。「イシェ、僕たちは何か大きなものに巻き込まれているんじゃないか?」