ビレーの朝の光は、まだ遺跡の影に届かない。ラーンは、イシェが煮出した薄い粥をすすりながら、今日もどこか遠くを見つめていた。
「また大穴が見つかったって話らしいぞ」
ラーンの言葉に、イシェは眉をひそめた。「そんな噂、いつもあるじゃないか。今回は本当かどうかさえ分からない」
「でもな、今回は違う気がするんだ」ラーンは目を輝かせた。「あの遺跡の奥深くで、何か大きなものが見つかったってさ。まるで、古代人が納入した宝庫みたいだ」
イシェはため息をついた。ラーンの妄想に付き合うのは、もう習慣になっていた。だが、今回のテルヘルの依頼は少し違った。彼女の目的は単なる遺物探しではないようだった。何か、ヴォルダンと関係する重要な情報を探しているらしい。
「今回は、大穴が見つかるかもしれないぞ」
ラーンの言葉が、イシェの心をわずかに揺さぶった。いつも通りの無謀な冒険ではなく、もしかしたら、彼らの運命を変える何かがあるのかもしれません。
テルヘルは、いつものように冷静に指示を出した。「遺跡内部の地図を精査して、ヴォルダン関連の情報を探せ。特に、納入に関する記録には注意するんだ」
三人は遺跡へと向かった。ラーンの興奮が伝染するかのように、イシェの心にもわずかな期待が芽生えていた。そして、テルヘルの冷酷な表情の下に隠された何かを感じた。
遺跡の入り口で、イシェはラーンに静かに言った。「今回は気を付けてくれ。何かがおかしい気がする」