ビレーの tavern の喧騒を背に、ラーンはイシェの眉間に刻まれたしわを見つめていた。
「本当にいいんだろ？」イシェが不安げに尋ねた。「あのテルヘル、信用できるか？ ああいう奴は結局俺たちを捨て駒にするんじゃないか？」
ラーンの胸は高揚していた。テルヘルの提示した報酬は彼らが今まで受けたものとは比べ物にならない金額だった。しかも、遺跡の調査だけでなく、遺物の独占まで約束されたのだ。「大丈夫だ、イシェ。あの女は本気だ。それに、俺たちには選択肢がないんだろ？」ラーンはそう言った。
彼の視線は tavern の奥、壁に飾られた古びた紋章へと向いた。それはビレーの創設を記す紋章で、かつてこの地を支配した一族の象徴だった。今は忘れ去られてしまった歴史の痕跡だが、ラーンの心には常にその存在が重くのしかかっていた。
「あの紋章みたいだな」イシェが呟いた。「あの女も何か大きな野望を抱いてるんじゃないか？」
ラーンは頷いた。テルヘルから聞いた話では、彼女はヴォルダンという大国に全てを奪われたという。復讐のためにはどんな手段も厭わない、冷酷な女性だった。だが、同時にその瞳には深い悲しみと怒りが宿っていたのも確かだった。
「俺は…俺には何もないんだ」ラーンは呟いた。イシェの心配をよそに、彼はテルヘルに同行することを決意していた。大穴を見つけることよりも、何か大きなものを成し遂げたいという衝動に駆られていたのだ。
次の日、三人はビレーを出発した。彼らの前に広がるのは、未開の地と古代の遺跡で満たされた、未知の世界だった。彼らを待ち受ける運命は、あの紋章に刻まれた歴史と同じく、光と影が入り混じるものになるのだろうか？