「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂では奥に何かあるって話だろ?」
ラーンの興奮した声に、イシェはため息をついた。
「また噂話に飛びつくのか。 collapsesの遺跡なんて、危険なだけだぞ。」
「大丈夫だって!俺が守るから」 ラーンは胸を張ったが、イシェは彼の視線から逸れた。
「あの塔は、ヴォルダン軍が一時拠点にしてたって聞いたんだ。罠とか仕掛けがあるかも…」
「そんなこと言ってると始まらないよ。それに、テルヘルさんが高い報酬をくれたんだから、ちゃんと成果を出さないとね」
ラーンの言葉にイシェは深くため息をついた。テルヘルとの約束を果たすため、そして彼自身もいつか大穴を掘り当てたいという夢のため、危険な遺跡に足を踏み入れるのだ。
崩れかけた石畳を慎重に進む三人の背後には、深い影が長く伸びていた。
「ここからは特に注意しろ。ヴォルダン兵の痕跡があるぞ」テルヘルは鋭い眼差しで周囲を警戒しながら言った。
イシェは小さな音を立てないように足取りを軽くし、ラーンの後ろを歩いた。
「あの時…」
テルヘルの言葉に、ラーンは一瞬戸惑った。彼女はいつも冷静沈着だが、今日は何かが違うように見えた。
「あの時、ヴォルダンに奪われたもの… 私は必ず復讐する」
彼女の目は燃えるような光を放っていた。イシェはラーンの顔色を見つめた。彼はテルヘルに心酔しているようだった。
塔の奥深くへと続く階段を登っていくと、突然石壁から激しい風が吹き出した。
「何だこれは!」
ラーンがよろめきながら剣を構えると、壁に埋め込まれた石板が光り始めた。
「これは…!」イシェは目を丸くした。
「古代の魔術装置だ」テルヘルは冷静に言った。「この装置は封印されているはずだが…」
その時、石板から放たれた光が三人に襲いかかった。
「うっ!」
ラーンは叫び声を上げながら地面に倒れ込んだ。イシェは必死に彼を庇った。
「ラーン!大丈夫か?」
しかし、ラーンの顔色は青白く、息も荒くなっていた。
「約束…守れなかった…」
彼はかすれた声で呟き、意識を失った。
イシェはラーンを抱き上げながら、テルヘルに助けを求めた。だが、彼女の表情は冷酷な笑みでいっぱいだった。
「約束?そんなものは、もう必要ないわ」