ビレーの夕暮れは、山々に囲まれた街に長い影を落とす。ラーンが酒場で豪快な笑い声を上げている横で、イシェは眉間に皺を寄せていた。
「またあの話か…」
「そうさ!いつか大穴を見つけるんだ!ビレーの貧乏神から解放されて!」
ラーンの言葉にイシェはため息をつく。ラーンの夢はいつまでも変わらない。だが、イシェにはそんな余裕はない。
「明日も遺跡探検だ。テルヘルは報酬を上げてきたぞ」
イシェがそう言うと、ラーンは顔を輝かせる。テルヘルの依頼は高額で危険な場合が多い。
「よし、明日の朝は早起きだな!イシェ、お前も準備してろよ!」
ラーンの言葉に、イシェは小さく頷く。
遺跡の入り口は、暗くて湿った空気に包まれていた。ラーンは剣を構え、イシェは懐中電灯を照らす。テルヘルは背後から二人を見下ろすように歩みを進めた。
「ここには何があるのか…?」
イシェが呟くと、テルヘルは冷淡な声で答えた。
「古い記録によると、ここは古代の王家の墓らしい。そこに眠る遺物は、ヴォルダンに奪われたものかもしれない」
テルヘルの言葉にラーンは興奮し始める。だがイシェは不安を隠せない。
遺跡の奥深くへと進むにつれて、空気は重くなり、静けさは不気味さを増す。壁には古代文字が刻まれており、奇妙な模様が描かれている。
「何だこれは…」
ラーンの声が響き渡る。壁の一部が崩れ、その向こうに広がる空間が見える。そこには、巨大な石棺が置かれていた。
「見つけたぞ!大穴だ!」
ラーンは興奮して棺の蓋を開けようとする。だがイシェは彼を制止する。
「待て!何か変だ」
イシェの言葉が響き渡る直後、棺から黒い煙が噴き出した。煙の中から、不気味な声が聞こえてくる。
「お前たちは…誰だ…」
ラーンは恐怖で言葉を失い、イシェは剣を抜く。テルヘルは冷静に状況を分析していた。
「これは…系譜を守る者か…」
テルヘルの言葉にラーンとイシェは驚きを隠せない。
「系譜…?」