「よし、今日はあの遺跡の奥へ行くぞ!」ラーンの豪快な声はビレーの朝日に負けず劣らず輝いていた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せていた。「また無計画だ。あの遺跡は危険だって聞いたことがあるぞ。何か対策でも立てないと…」
「大丈夫、大丈夫!俺が先頭を切って開けばいいんだ!」ラーンはそう言って胸を張った。彼の背中には、いつもより少しだけ重い剣が載っていた。テルヘルからの依頼で、今回は報酬も格段に上がったのだ。
「あの遺跡には、ヴォルダン軍が何らかの目的で探しているらしいぞ」テルヘルは鋭い眼差しでラーンたちに言った。「もし何か見つけたら、すぐに私に知らせるんだ。そして…生きて帰って来なさい。」彼女の言葉には、どこか切実なものが込められていた。
ビレーを後にした三人は、険しい山道を登り始めた。道中ではイシェが慎重に足取りを確かめ、ラーンは軽快に進んでいく。テルヘルは常に周囲の状況を警戒し、時折地図を広げて確認していた。
遺跡の入り口は、崩れかけた石造りの門だった。かつて栄華を誇った文明の名残が、ひっそりと息づいているようだった。
「よし、ここからだ!」ラーンは興奮気味に門をくぐろうとした。しかし、イシェは彼の腕を引き止めた。「待て。何か変だぞ…」
その時、空から不気味な影が差し込んだ。巨大な鳥型の魔物の影が遺跡の奥へと伸びていたのだ。
「これは…!」ラーンの顔色が変わった。テルヘルは冷静に剣を抜き、「すぐに逃げろ!あの魔物は強力だ!」と叫んだ。
三人は慌てて遺跡から逃げるが、魔物に追われてしまう。イシェは軽快な動きで魔物の攻撃をかわすものの、ラーンは足がもつれて転倒してしまう。
「ラーン!」イシェが振り返ると、魔物はその隙をついてラーンめがけて鋭い爪を振り下ろした。その時、ラーンの前にテルヘルが現れ、剣を構えて魔物の攻撃を受け止めた。
「逃げろ!俺たちが時間を稼ぐぞ!」テルヘルは叫びながら、必死に魔物と戦った。ラーンはイシェの手を引き、なんとか遺跡から逃げることに成功した。
安全な場所に着いた後、ラーンは息を切らしながら言った。「あのテルヘル…本当に強い…」
イシェも頷きながら言った。「あの魔物には勝てない…。でも、なぜテルヘルがそんなに危険な場所に?」
二人は疑問を抱きながらも、遺跡から持ち出した糧秣を分け合い、次の行動について話し合った。その夜、ビレーの街灯の下で、三人の影は長く伸びていた。