ラーンの大斧が朽ちた石門を粉砕した。埃が舞う中、イシェは鼻をつまんで「また無茶なことを…」と呟いた。だが、ラーンは既に遺跡の中へと入っていた。
「ほら、イシェ!こんなの、大穴に比べたらゴミみてえだぞ!」
彼の背後からテルヘルが低い声で言った。「油断するな、ラーン。この遺跡には精霊の力が宿ると言われている。軽率に手を出すと…」
「うるさいな、テルヘル。俺たちはtreasure hunterだ!精霊なんか怖くないぜ!」
ラーンの言葉とは裏腹に、彼は奇妙な緊張感を感じていた。遺跡内の空気は重く、不気味な静けさがあった。イシェもまた、背筋がゾッとするような感覚を覚え、テルヘルの言葉を思い出す。
彼らは遺跡の奥へ進むにつれて、壁画や彫刻に描かれた精霊の姿が目に入るようになった。その目はまるで生きているかのように、彼らをじっと見つめていた。イシェは不気味な絵画に目を背けようとしたが、ラーンは興味津々に近づいていった。
「おぉ!これは凄いぞ!こんな精霊の絵を見たのは初めてだ!」
ラーンの指が壁画に触れた瞬間、空気が激しく震えた。石畳の床が割れ、そこから黒い煙が噴き出した。煙が晴れると、そこには巨大な影が立っていた。それは精霊の姿をしたもので、その目は燃えるような赤い光を放っていた。
「や…やばいぞ!逃げろ!」
ラーンの叫び声に、三人は慌てて逃げる。しかし、精霊は彼らを追いかけ始めた。イシェは振り返らずに走り続けたが、後ろから聞こえてくる足音と咆哮が、彼女を恐怖で震わせた。