ラーンの豪快な笑いが、ビレーの薄暗い酒場に響き渡った。イシェがため息をつく前に、テーブルを叩く音がした。
「おいおい、イシェ。そんな顔すんなよ!今日は大穴が見つかる予感がするんだ!」
イシェは眉間にしわを寄せた。「またか、ラーン。そんな楽観的なことばかり言わないでほしい。あの遺跡は危険だって何度も言っただろう。」
「大丈夫だ、大丈夫。俺が守るからな!」
ラーンの自信に満ちた言葉に、イシェは苦笑した。彼の無鉄砲さは、時に頼りになったり、時には困ったりする。だが、彼を裏切ることなどできない。
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い視線は、二人を包み込むように冷たかった。
「準備はいいか?」
ラーンはニヤリと笑った。「いつでも行くぜ!」
イシェはテルヘルの冷たい視線を感じながらも、「はい、準備はできています」と答えた。
遺跡の入り口に立つと、不気味な風が吹き抜けた。イシェは背筋が寒くなった。いつも以上に危険を感じたのだ。
「よし、行こう!」
ラーンの言葉と共に、彼らは遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内部は暗く、湿った空気が流れ込んでいた。壁には古びた彫刻が刻まれ、奇妙な模様が描かれていた。
「何かいる気がする…」
イシェの言葉に、ラーンは剣を構えた。テルヘルは静かに周囲を見渡していた。
突然、床から怪物の影が現れた。鋭い牙と爪を持つ、恐ろしい姿だった。ラーンが剣を振り下ろすと、怪物は激しく抵抗した。
激しい戦いの末、ラーンはついに怪物に致命傷を与えた。だが、その瞬間、背後から何者かの声が聞こえた。
「よくやった。これで準備は整った」
振り返ると、そこにはテルヘルの姿があった。だが、彼女の表情はどこか冷酷で、今までとは違った何かが宿っていた。
「何をしているんだ、テルヘル!」
ラーンの怒りの声に、テルヘルは嘲笑を浮かべた。
「もう用済みだ。お前たちはこの遺跡から出られなくなる」
イシェは恐怖で言葉を失った。ラーンは剣を構え直したが、すでに遅かった。
テルヘルは、手元に隠していた小さな瓶から赤い液体を出し、地面に注いだ。すると、壁から黒い煙が立ち上り、部屋全体を包み込んだ。
「お前たちがヴォルダンに復讐するなんて、甘い妄想だ」
テルヘルの言葉が、煙の中に響き渡った。イシェはラーンの顔を見て、彼の目に映る恐怖と怒りを強く感じた。
そして、二人は黒い煙の中に飲み込まれていった。
テルヘルは静かに立ち去り、遺跡の入り口を封鎖した。彼女は、この遺跡に眠る秘密を手に入れるため、どんな手段を使っても厭わない。そして、ヴォルダンへの復讐を果たすために、容赦なくすべてを犠牲にする覚悟があった。