ラーンが遺跡の奥深くへと足を踏み入れると、湿った空気と共に、何とも言えない獣臭が鼻腔をくすぐった。イシェは眉間に皺を寄せ、「ここには何かがいる気がする…」と呟きながら、周囲を警戒していた。テルヘルは淡々と地図を広げ、壁に刻まれた謎の記号を指でなぞり、「この遺跡はヴォルダン軍がかつて使っていた可能性が高い。注意深く進もう」と冷静に指示した。
彼らは崩れかけた石畳の上を進み、薄暗い通路の先に広がる広間へとたどり着いた。壁一面には不気味な絵画が描かれており、中央には巨大な祭壇が鎮座していた。祭壇の上には、黒曜石でできた奇妙な容器が置かれていた。ラーンが好奇心に駆られて近づくと、イシェは「待て!」と叫んだが遅かった。
容器を触れた瞬間、激しい衝撃波がラーンの体を襲った。彼の目は真っ赤に染まり、鼻腔から血が流れ出した。粘膜が激しく刺激され、苦しそうな声を上げるラーン。イシェは慌ててラーンの腕をつかみ、「大丈夫か!?」と問いかけたが、ラーンは意識を失ってしまった。テルヘルは冷静さを保ちながら、容器を慎重に調べ始めた。「これは…危険だ」と呟き、イシェに「彼を安全な場所に運び、私はこの容器を調査する」と指示した。
イシェはラーンの重体を背負い、出口へと急いでいた。後ろからテルヘルの声が響いた。「イシェ、あの容器には何か邪悪な力を感じる…ラーンを助けるためには、この遺跡の秘密を解き明かす必要がある」