「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂じゃ奥に秘宝が眠ってるらしい」
ラーンの豪快な声は、ビレーの賑やかな市場を吹き抜けていった。イシェは眉間に皺を寄せながら彼を見つめた。
「またそんな話? いつも大 talked about な場所ばかり行くから失敗するんだよ」
「失敗なんてないさ!いつか必ず大穴を掘り当てるんだ!」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。彼の楽観的な性格には、イシェは時に呆れながらも、どこか安心感さえ覚える。
その時、背後から涼しい声が響いた。
「今回は私が場所を選ばせていただくわ」
振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の鋭い瞳は、ラーンとイシェの顔を見据えていた。
「今回はヴォルダン遺跡だ。情報によると、そこには強力な魔道具が眠っているらしい」
テルヘルの言葉に、ラーンの目は輝きを増した。だがイシェは何かを感じ取った。テルヘルの表情に、いつも以上に冷たい光が宿っていたのだ。
「魔道具か… 危険な場所になりそうだな…」
イシェが呟くと、テルヘルは薄く笑みを浮かべた。
「大丈夫。私はあなたたちを護るわ」
その言葉の裏には、何か別の意図が隠されているような気がした。イシェは不安を感じながらも、ラーンの興奮を抑えるように頷いた。三人は、テルヘルの案内でヴォルダン遺跡へと向かった。彼らの前に広がるのは、未知なる冒険と、やがて訪れるであろう運命だった。