「よし、今回はあの崩れた塔だ。地図によると、地下深くには未開の部屋があるらしい」ラーンが目を輝かせ、古びた地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を睨んだ。「またそんな危険な場所? 以前あの洞窟で遭遇したあの巨大蜘蛛の記憶が蘇るよ」。「心配するな、イシェ。今回はテルヘルさんがいるじゃないか」ラーンは胸を叩き、テルヘルの方へ視線を向けた。
テルヘルは静かにテーブルに肘をつき、鋭い眼光で地図を眺めていた。「情報によれば、その部屋にはヴォルダンがかつて所有していたとされる魔導書があるらしい。それを手に入れることができれば、私の復讐計画も大きく前進する」彼女は冷酷な笑みを浮かべた。ラーンの顔は興奮で真っ赤になった。「よし、じゃあ準備だ! 大穴が見つかるかもしれないぞ!」
イシェはラーンの熱気に押され、ため息をついた。「またしても彼のペースに巻き込まれてしまうのか…」しかし、テルヘルの存在が何か安心感を与えてくれるのも事実だった。彼女はいつも冷静沈着で、危険な状況でも的確な判断を下す。そして何より、ラーンとイシェを遺跡探索の仕事に雇ったのは、単なる力が必要だったからではないように思えた。まるで、彼ら自身を利用しようとする何かしらの計画の一環のように…。
「準備はいいか?」テルヘルが立ち上がった。「あの塔には危険が潜んでいる。だが、我々が手に入れるべきものもそこにある。覚悟しておけ」彼女の言葉に、ラーンとイシェは互いに頷き合った。彼らはテルヘルの後ろについて、崩れた塔へと向かった。
夕暮れの薄暗い森の中を進む三人の影は、やがて塔の巨大な影に包まれた。