「よし、ここだ。」ラーンが剣を地面に突き立てて言った。イシェは眉間に皺を寄せながら遺跡の入り口を見つめていた。「また、そんな薄暗い場所かい?」と呟きつつも、懐中電灯を手に取る。テルヘルは背後から二人を見下ろし、「時間がない。急げ」と声を荒らげた。
この遺跡は、ビレー近郊で最も古いものの一つだと言われている。しかし、過去の探検隊が誰も無事に帰ってきたことがないという不吉な噂があった。それでも、ラーンは「大穴」の可能性を秘めていると信じ込んでいた。イシェは彼の熱意に巻き込まれながらも、どこか不安を感じていた。
テルヘルは二人を遺跡の中へと導いた。彼女は事前に調査を行い、この遺跡にはヴォルダンがかつて隠した秘密があるという情報を得ていた。それは、ヴォルダンを滅ぼす鍵となる可能性のあるものだった。しかし、その情報は不完全で、遺跡の奥深くにある「王の間」に隠されているという噂だけだ。
遺跡内部は湿気が多く、薄暗い通路が続く。壁には奇妙な模様が刻まれていて、不気味な空気を漂わせていた。ラーンは軽々と石畳を駆け上がり、イシェはその後に続いていく。テルヘルは二人よりも遅く慎重に進んでいった。彼女の目は常に周囲を警戒し、何かを探しているようだった。
「ここが王の間だ。」ラーンの声が響き渡った。目の前には広大な部屋が広がり、中央には玉座が置かれていた。しかし、そこには何もなかった。ラーンは肩を落とした。「また空っぽか…」と呟いた。イシェも失望した様子を見せた。
テルヘルは静かに玉座に近づき、壁を叩いた。「おかしい…情報の間違いだろうか?」その時、床がわずかに沈み込み、石畳の一部がスライドした。そこに隠された階段が現れたのだ。
「これは…」イシェは驚愕の声を上げた。ラーンの顔も驚きで固まった。テルヘルは満足げに笑みを浮かべた。「見つけたぞ」と呟いた。階段の先には、漆黒の扉が待ち受けていた。
「さあ、行くぞ。」テルヘルは剣を抜き、先頭を歩く。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせて、うなずき合った。彼らはテルヘルの策略には気づいていなかった。彼女が遺跡の真実を知っていたこと、そして、自分たちを駒として利用していることに。
扉を開けた瞬間、強烈な光が彼らを包んだ。