ラーンの大 hammer が石壁を叩き込んだ。粉塵が舞い上がり、一瞬の静寂の後、鈍い thudと共に崩落が始まった。イシェは素早く後退し、「また暴走か?」と眉間にしわを寄せた。ラーンは得意げに笑う。「ほら、言っただろう? 今回は大穴だ!」
だが、その奥には広がるのはただの狭い通路だった。イシェが溜息をつき、地図を広げた。「これじゃ、また一日無駄になるな…」
テルヘルは冷静に周囲を警戒した。「何かの仕掛けがあるかもしれない。油断するな。」彼女は鋭い視線で壁面を巡回し、何かを探しているようだった。
「おい、待てよ!」ラーンが突然叫んだ。彼の目は通路の奥深くにある、薄暗い影に注がれていた。それは巨大な扉だった。「あれだ! 伝説の…」彼は興奮気味に扉に近づこうとした。
イシェはラーンの腕を掴んだ。「待て! まずは安全を確認だ。罠があるかもしれない!」
だが、ラーンは聞き入れなかった。すでに扉の前まで来ていた。彼は力強く手を扉にかけ、息を呑んで力を込めた。筋肉が浮き上がり、脈打つのが見えるほどだった。扉はわずかに軋んだ。
その瞬間、イシェは背後から異変を感じた。影が彼らに迫っているのだ。振り返ると、巨大な怪物が咆哮しながら襲いかかってきた。
ラーンの顔色が変わった。「しまった! 罠だ!」彼は扉を押し付け、怪物との間にわずかな距離を作った。だが、怪物は強力な腕で扉を押し戻そうとしている。
「イシェ、逃げろ!」ラーンは叫んだ。彼の顔には決意の色が浮かんでいた。イシェは一瞬ためらったが、すぐに後退した。彼女は振り返らずに走り続けた。
ラーンの背後から聞こえる激戦の音が徐々に遠ざかり、静寂が訪れた。イシェは息を切らしながら立ち止まり、後ろを振り返った。
そこには、扉を破壊し尽くし、ラーンを圧倒していた怪物がいた。そして、その脇で剣を構え、怪物に立ち向かうテルヘルの姿があった。
イシェは呆然と見つめていた。ラーンの無謀さによって招かれた危機を、テルヘルが一人で背負っているのだ。彼女の冷静さと強さは、イシェの心を打ち動かした。そして、同時に、ラーンとの距離を感じた。