日差しが容赦なく照りつける灼熱の砂漠を、ラーンとイシェは歩き続けていた。背後には、テルヘルが影のようについてくる。遺跡探しの依頼は、今回はヴォルダンとの国境付近の荒れ地だった。危険な場所だが、その分報酬も高かった。
「本当にこんな場所に遺跡があるのかい?」
ラーンの愚痴をイシェが軽く一瞥した。「地図に記されているし、テルヘルさんも確認しているんでしょう?」
「ああ、確かにある」とテルヘルは低い声で言った。「この地域にはかつてヴォルダン帝国の砦があった。遺跡はそれを利用したものかもしれない」
彼女の目は鋭く、砂漠の果てを見据えていた。ラーンは、テルヘルの目を見るたび、どこか不気味なものを感じた。彼女の中に渦巻く憎悪と復讐心は、まるで影のように彼らを追いかけてくる。
日が沈み始め、辺りは薄暗くなっていく。彼らは小さな谷にたどり着き、そこで一晩を過ごすことにした。焚き火の火が揺らめき、三人は固いパンを頬張った。
「今日の探索は何も見つからなかったな」ラーンがため息をついた。「この暑さで疲れたぞ」
「まだ諦めるには早すぎる」イシェは冷静に言った。「明日こそ何か発見があるかもしれない」
テルヘルは沈黙を守り、火を見つめていた。彼女の表情は暗く、何かを思いつめているようだった。
夜が更け、ラーンとイシェは眠りについた。しかし、テルヘルは目を覚ましていた。彼女はそっと立ち上がり、周囲を警戒しながら、谷の外へと消えていった。
朝日が昇ると、テルヘルは戻ってきた。彼女の顔には、わずかな笑みが浮かんでいた。「明日、我々が探す遺跡は、ヴォルダン帝国の秘密兵器の研究施設だったようだ」
ラーンの目を見開いた。「そんな…」
「その秘密兵器こそが、私が復讐を果たすための鍵になるだろう」テルヘルは冷たい目で言った。彼女の瞳には、燃えるような決意が宿っていた。