ラーンが、いつものように大口を開けて笑った。「よし、今日は絶対何か出るぞ！イシェ、お前もそう思うだろ？」
イシェは、ラーンの背後から小さなため息をついた。「そう願うよ。でも、またあの『古代の壺』とかじゃなければいいけど…」
ラーンは気にせず、遺跡の入口に続く階段を駆け下りていった。テルヘルが、彼らを待っていた。彼女の鋭い視線は、まるで彼らを透かしているようだった。
「準備はいいか？」テルヘルの声は冷たかった。「今日は特に慎重にならなければならない。ヴォルダンが動き出したという情報が入っている」
ラーンの顔色が少し曇った。「またか…」
イシェはラーンの肩を軽く叩いた。「気にしないよ。僕たちがここにいるから大丈夫だ」
テルヘルは、彼らをじっと見つめた後、小さく頷いた。「では、入ろう」
遺跡の内部は薄暗く、湿った空気で満たされていた。壁には、何千年も前に書かれた奇妙な記号が刻まれていた。ラーンの足音だけが、静寂に響いていた。
「ここだな」テルヘルが突然立ち止まった。彼女の指先が、壁にある小さな石を指さしていた。「ここに何かがあるはずだ」
ラーンは、興奮を抑えきれずに石を叩き始めた。石の下から、小さな金属製の箱が見えた。
「やった！何か出たぞ！」ラーンの声が、遺跡にこだました。
イシェも駆け寄り、箱を慎重に開けた。中から出てきたのは、古びたコインだった。
「またか…」イシェは肩を落とした。「こんなもの…」
その時、遠くで、何かが崩れる音がした。
「何だ？」ラーンは目を丸くした。
テルヘルは、顔色を変えながら言った。「ヴォルダンの兵士だ…逃げろ！」