「おいイシェ、あの石像、どうみても偽物だろ？」ラーンが鼻をひくひくと動かした。イシェは眉間に皺を寄せながら、石像をじっと見つめた。「確かに何か不自然な気もするけど…」
「ほら、この顔、見てごらん。まるで子供のお絵かきみたいじゃないか！」ラーンが大声で笑った。石像の表情はどこかぎこちなく、確かに笑いを誘うものだった。イシェも思わず苦笑を漏らした。「まあ、確かにそうかもしれないわね。でも、偽物だと断定するには証拠がないし…」
「証拠？そんなもん要らないだろう！俺の直感だ！」ラーンは自信満々に胸を張った。イシェはため息をつきながら、石像の周りを見渡した。遺跡の奥深くで、ほこりまみれの宝箱が鎮座している。
「よし、宝箱を開けようぜ！」ラーンの目が輝いた。しかし、イシェは彼の腕を抑えた。「ちょっと待ちなさい。あの石像、何か仕掛けがあるかもしれないわよ。まず安全を確認しないと」
「そんなこと言ってても時間の無駄だぞ！ほら、開けてみろって！」ラーンはイシェの制止を振り切り、宝箱に手を伸ばした。その時、石像の目が光り始めた。そして、その目はゆっくりとラーンの顔に向けられた。
「うわっ！」ラーンは驚いて後ろへ跳ね返った。石像が動き出したのだ。イシェも驚きで言葉を失った。「まさか、本当に仕掛けが…」
石像はゆっくりと歩き出し、ラーンの前に立ちはだかった。その表情は、まるで嘲笑しているようだった。ラーンは顔面蒼白になりながら、剣を抜いた。「おいおい、冗談だろ？こんなはずじゃなかったぞ！」
石像はゆっくりと手を伸ばし、ラーンの頭を叩きつけた。ラーンは地面に倒れ込み、意識を失った。イシェは呆然と立ち尽くしていた。そして、思わず笑いをこらえきれなくなった。
「あ…あの…」イシェは笑い声を抑えながら言った。「まさか、ラーンが石像にやられるなんて…」
その時、石像の目が再び光り始めた。そして、ゆっくりとイシェの方を向いた。イシェは慌てて逃げ出した。石像の後ろから、ラーンの笑い声が聞こえた。