ラーンの粗雑な剣さばきが埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと続く通路を照らす焚火の光が揺らめいた。イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れかけた石畳の上を慎重に足場を確認しながら進む。「本当にここが正解なのか？ この道は地図にも載ってないぞ」
ラーンは豪快に笑い、「地図なんて嘘っぱちだらけだ！俺の勘を信じるんだ！」と胸を叩き、振り返った。イシェの視線の先には、テルヘルが背を向け、何かをじっと見つめていた。彼女の鋭い視線は、壁に沿って彫られた奇妙な模様に注がれていた。「何だ、それ？」イシェが尋ねると、テルヘルはゆっくりと首を振る。「今は言えない。ただ、これは重要なものだと確信した」
その夜、ビレーに戻った三人は疲れ果てた様子だった。遺跡から持ち帰ったのは、錆びついた小さな金属片と、見慣れない文様が刻まれた石板だけだった。「こんなもんじゃ、大穴には程遠いな…」ラーンは肩を落とす。イシェも首を傾げていた。「確かに奇妙なものだけど…一体何の意味があるんだろう？」
テルヘルは、その日の夜、ビレーの闇市で密会をした。相手は、ヴォルダンとの貿易を扱う商人だった。彼の目は鋭く、金に執着した男だった。テーブルの上に置かれた石板を見つめ、「これはヴォルダンが探しているものだ」と彼は言った。「競売で高値で落札するつもりだ。お前も一緒に儲けよう」
テルヘルは静かに頷いた。彼女の心には、復讐への渇望と、この石板が秘めた真実に迫りたいという欲求があった。ヴォルダンとの戦いは、まだ始まったばかりだった。