「よし、今回はあの奥の部屋だな」
ラーンが遺跡の地図を広げると、イシェは眉間にしわを寄せた。
「また危険な場所？ ラーン、あの部屋は以前にも collapse したって話があったんじゃないか？」
「ああ、確かにそうだったな。でも、あの崩れた壁の中に何かがある気がするんだ！ それに、テルヘルが言ってたように、今回は大物らしいぞ」
ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をつきながら、後ろ髪を引かれる思いで彼の後を続けた。テルヘルはいつも通り、冷静に周囲を警戒しながら歩いていた。
遺跡内部は暗く湿り気があり、不気味な影が壁に揺らいでいる。ラーンが先頭を切って進むと、崩れた壁の隙間から薄暗い光が漏れてきた。
「ほら！ あそこに何かあるぞ！」
ラーンの声が響き渡ると、イシェも興奮を覚えた。壁の隙間には、確かに何か金属製の物体が見えた。
「よし、一緒に持ち上げようぜ！」
ラーンとイシェが力を合わせて石を動かすと、その下に小さな箱が現れた。箱は錆び付いた金具で施錠されている。
「これは…！」
テルヘルが駆け寄ると、箱の表面に刻まれた紋章を指差した。
「ヴォルダン王家の紋章だ…もしかしたら、失われた王家の宝なのかもしれない」
三人は興奮を抑えきれずに目を輝かせた。しかし、その瞬間、箱の上から崩れ落ちる石が彼らを襲った。
「うわぁ！」
イシェが転げ落ちると、ラーンは慌てて彼女を抱き上げた。テルヘルが振り返ると、後ろに何者かが立っていた。
「誰だ！？ 」
テルヘルが剣を抜くと、相手もまた剣を抜き、立ち向かってきた。
「ここは私のものだ…ヴォルダン王家の宝は、私だけが手に入れる」
男は冷酷な笑みを浮かべながら言った。
「お前は…」
テルヘルは男の顔を見て言葉を失った。それは、ヴォルダンに復讐を誓う彼女の過去を知る者だった。
男は剣を振り下ろすと、ラーンとイシェを襲い始めた。
三人は必死に抵抗したが、男の力は強かった。イシェが傷つきそうになる瞬間、テルヘルが身を挺して彼女を守った。
「逃げるんだ！ この男は私との因縁がある…お前たちは安全な場所へ！」
テルヘルは男と対峙し、ラーンとイシェに指示を出した。
二人は迷わず遺跡から逃げ出した。その時、イシェは振り返ると、テルヘルが男と激しい戦いを繰り広げている姿を見た。
「あの男…一体何者だ…」
イシェは恐怖と不安を感じながらも、ラーンの手を強く握りしめた。
彼らは遺跡から脱出し、安全な場所にたどり着いた。
しかし、テルヘルの運命は不明瞭のままだった。
そして、ヴォルダン王家の宝の行方も…。