灼熱の太陽が容赦なく照りつけるビレーの街。日差しさえも重く感じるような湿気は、立秋の訪れを感じさせない。ラーンは額の汗を拭いながら、イシェに声をかけた。「今日はいい感じだな!何かしら見つかる予感しかしないぜ!」
イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら、「そんな楽観的なことばかり言わないで。遺跡探検には慎重さも必要だ」と釘を刺した。
ラーンの言葉通り、今日の遺跡は異様だった。入口から漂う古びた石の臭い、そして不気味な静けさは、彼らをいつも以上に緊張させた。テルヘルが事前に調べた情報によると、この遺跡にはかつて強力な魔法使いが住んでいたという。その魔法使いが残した遺物には、莫大な力があると噂されていた。
「よし、ここを突破すれば奥だ!」ラーンが先頭を切り開いて進む。イシェは後ろから彼を警戒しながら続く。テルヘルはいつも通り冷静に周囲を観察していた。
遺跡の奥深くを進んでいくと、巨大な石棺が現れた。その上には複雑な模様が刻まれ、まるで生きているかのように脈打っているように見えた。
「これは…!」ラーンの声が震える。「ついに大穴が見つかったのか?」
イシェは緊張した表情で石棺を注意深く観察した。「何かの罠かもしれない。近づきすぎないほうがいい」と警告するが、ラーンは興奮を抑えきれず、すでに石棺に手を伸ばそうとしていた。
その時、石棺から不気味な光が放たれ、その場に立っていたテルヘルに向かって襲いかかった。テルヘルは咄嗟に剣を抜いて防御したが、その光は彼女の体をも貫き、激しい痛みが彼女を襲った。
「テルヘル!」ラーンとイシェが声を上げると、テルヘルの体は光に包まれ、ゆっくりと崩れ落ちていった。
その時、石棺の蓋が開き、中から漆黒の影が立ち上がり、不気味な笑い声を上げた。ラーンの顔には恐怖の色が浮かぶ。
「立秋…」イシェは小さく呟いた。「この遺跡は、立秋の日に力を増すのかもしれない」