「おい、イシェ、あの石の塊、どう思う?」
ラーンが指差す方向には、崩れた遺跡の奥底に、不規則な形状をした大きな石が転がっていた。表面は苔むし、何千年も風雨にさらされた証が刻まれていた。
「何だろうね…でも、特に価値があるとは思えないわ」
イシェは慎重に石を一周し、ラーンに首を振った。「あの辺りには何もないみたいだし、今日はもう引き上げようよ」
「えー、まだ日も高いじゃないか!せっかくここに来たんだから、もう少し探さない?」
ラーンの瞳には冒険心を燃やす炎が宿っていた。イシェはため息をついた。ラーンの熱意に巻き込まれることの方が多いから、結局はいつもついて行くことになるのだ。
その時、後ろから声が聞こえた。「その石、よく見てください」
振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女はいつも通り黒いマントを身にまとっており、鋭い眼光で石を見つめている。
「あの石には魔法の力がある可能性があります。古代の文献に似た記述があったからです」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは目を丸くした。魔法の力?それは想像を掻き立てる言葉だった。
「でも、どうすればその力を引き出せるんですか?」ラーンの問いに、テルヘルは薄暗い笑みを浮かべた。「それは…まだ秘密です」
彼女はゆっくりと石に近づき、手を伸ばした。
「この遺跡には、ヴォルダンが隠した何かがあるはずです。そして、それが我々の未来を決める鍵になるでしょう…」
テルヘルの言葉は、まるで呪文のように響いた。ラーンの心は高鳴り、イシェの表情も硬くなる。三人は石を囲むように立ち止まり、沈黙の中で互いの意思を確かめ合った。
この遺跡で発見された石が、彼らの運命を大きく変えることになるのだろうか?そして、ヴォルダンとの戦いにどのような影響を与えるのか?彼らはまだ知る由もなかった。