ラーンが遺跡の入り口に足を踏み入れた瞬間、冷たい空気が彼を包んだ。いつも通りの薄暗い通路だったが、今日はなぜか不吉な予感がした。イシェはいつものように慎重に周囲を観察し、「何か変だ」と呟いた。テルヘルは眉間に皺を寄せながら、古い地図を広げた。「ここには記録がない…。警戒する必要がある」
彼らはゆっくりと奥へと進んでいった。石畳の床に足音が響き渡り、その音だけが彼らを不気味な静寂の世界へと誘うようだった。すると突然、壁から何かが飛び出して来た。ラーンは反射的に剣を抜いて構えたが、それはただの巨大なコウモリだった。イシェは驚いて声を上げたが、テルヘルは冷静に「気をつけろ!これは罠だ!」と叫んだ。
その瞬間、床が崩れ始め、ラーンの足元から奈落へと吸い込まれていくように崩れ落ちていった。ラーンはバランスを崩し、剣を落としながらも必死に手を伸ばした。イシェはラーンの腕を掴もうとしたが、間に合わなかった。
「ラーン!」
イシェの叫び声がこだまし、ラーンは奈落に落ち込んでいく。その時、彼の視界に入ったのは、底なしの闇の中に浮かぶ一枚の石板だった。そこに刻まれた記号が、まるで彼を呼び寄せるように光っていた。そして、ラーンの心の中で何かが突き刺さるような衝撃を感じた。
その衝動のまま、彼は本能的に奈落へと飛び込んだ。
イシェとテルヘルは、崩れた床の上で茫然と立ち尽くしていた。ラーンの姿を失った深い闇の中に、彼らが何をしたらいいのか分からず、ただ途方に暮れていた。そして、イシェの耳元に、かすかな声が届いた。それはまるで、奈落の底から聞こえてくるような、ラーンの絶叫だった。