ラーンが石畳の上で足を滑らせ、剣を地面に叩きつけた。「おい、イシェ、もっと慎重にしろよ！」
イシェは眉間に皺を寄せながら、崩れそうな遺跡の壁を指さした。「ここは本当に安全なのかしら？あの時、あの場所から聞こえた音が…」
「うるせーな、イシェ。大穴が見つかるなら、どんな危険もかまへん！」ラーンの豪快な笑い声が、薄暗い遺跡の奥へとこだました。
テルヘルは静かに周囲を警戒しながら、彼らのやり取りを冷静に見守っていた。彼女の目は鋭く、わずかな音や影の変化にも敏感に反応していた。
「この遺跡は、ヴォルダンの兵士たちが以前調査したことがあるらしい。彼らは何も見つけられなかったというが…」テルヘルは低く呟いた。「だが、何かを見落としているのかもしれない。」
ラーンとイシェは、彼女の言葉に耳を傾けながら、慎重に遺跡の中へと足を踏み入れていった。
崩れかけた階段を登り、朽ち果てた柱の間を縫うように進む。壁には奇妙な模様が刻まれており、埃をかぶった宝箱が転がっている。だが、彼らの目的はそれらではなかった。彼らは、この遺跡に隠された「突破口」を探していたのだ。
テルヘルが突然立ち止まり、手を上げると、ラーンとイシェも静かに息を呑んだ。
「何か聞こえる… 」テルヘルの声は震えていた。「あの音…それは…」
その時、壁の奥深くから、かすかな光が漏れてきた。三人は互いの目を合わせ、ゆっくりと光の方へと歩を進めた。その光が強くなるにつれ、彼らの顔に興奮と緊張の色が浮かび上がった。
ついに、彼らは小さな扉を発見した。扉は錆びており、隙間からわずかに光が漏れていた。
「ここだ…」テルヘルが呟くと、ラーンは力強く扉を開けた。その背後には、広大な地下空間が広がっていた。そして、その中心には、巨大な石碑がそびえ立っていた。石碑の上には、複雑な模様が刻まれており、その一部がかすかに光を放っていた。
「これが…突破口…」イシェは息をのんだ。
ラーンの表情も硬く、テルヘルは静かに剣を手に取った。この遺跡に眠る秘密、そしてヴォルダンへの復讐の鍵を握る「突破口」が、ついに開かれたのだ。