ビレーの酒場「荒くれ者の安息」はいつも喧騒に満ちていたが、今日は特に活気があった。ラーンとイシェはいつものようにテーブルに腰掛け、粗末な食事をしながら、テルヘルとの会話を聞いていた。
「あの遺跡には、ヴォルダンの軍が以前から目を付けているらしい」
テルヘルの冷たい声は、酒場の喧騒を一瞬にして沈黙させた。ラーンは眉をひそめた。「そんな危険な場所に踏み込むのはやめようぜ。俺たちには大穴があるだけだぞ」。イシェも頷いた。「確かに、報酬は魅力的だが、ヴォルダンと対峙するのは無謀すぎる」。
テルヘルは静かにグラスを傾け、「私はヴォルダンを倒すために生きている。そのために、どんな危険も冒す覚悟がある」と冷たく言った。彼女の目は燃えるように輝いていた。ラーンの顔色が変わった。「お前がヴォルダンに復讐したいのは知ってるぜ。だが、俺たちには関係ない。俺たちは遺跡から財宝を掘り当てて、ビレーで安らぎの暮らしを送りたいだけなんだ」。
イシェはラーンの肩を軽く叩き、「落ち着けよ」と優しく言った。「テルヘルには理由があるんだろ?私たちは彼女を助けるべきなのかもしれない」。
ラーンは渋い顔をした。「でも、俺たちにできることなんて…」
その時、酒場のドアが勢いよく開かれた。大男たちが押し寄せ、店の中に乱入してきた。彼らはヴォルダンの軍人だった。「テルヘルがいるのか?」とリーダーの男が叫んだ。「出て来い!彼女は我々の手に渡さなければならない!」
ラーンは立ち上がり、剣を抜き出した。「イシェ、逃げるぞ!」
イシェも席を立ち、小さなナイフを握りしめた。だが、テルヘルは動かなかった。彼女は静かに立ち上がり、男たちに近づいていった。
「私は逃げない」とテルヘルが言った。「お前たちを倒すためにここにいる」。
ヴォルダンの軍人たちは笑った。「お前の力は無駄だ!我々には勝てない!」
その時、ラーンが叫んだ。「イシェ、今だ!」
イシェは素早く動き、男たちの背後からナイフを突き出した。ラーンの剣も空を切り裂き、敵陣に突入した。激しい戦いが始まった。
テルヘルは冷静に戦い、ヴォルダンの軍人たちに容赦なく攻撃を仕掛けていった。彼女の動きはまるで踊りのように美しく、そして残酷だった。ラーンとイシェも必死に戦うが、敵の数に押され気味だ。
その時、ビレーの街の人々が店に駆け込んできた。彼らは武器を手にして、ヴォルダンの軍人に立ち向かった。
「ビレーを守るぞ!」
住民たちの怒号が響き渡る中、戦況は一変した。ラーンとイシェも力を合わせて戦い、ついにヴォルダンの軍人を撃退することに成功した。テルヘルは深く息を吸い込み、疲れた顔で言った。「ありがとう…お前たちは、私のために命懸けで戦ってくれた」。