ラーンが剣を片手に遺跡の奥深くへと踏み出した時、イシェは眉間に皺を寄せた。「ここは本当に安全なのか?あの奇妙な紋章…見たことあるような気もするけど…」
「大丈夫だって。ほら、テルヘルも言ってただろ?ここには大穴があるって。」ラーンはそう言いながらも、イシェの不安に少しだけ共感していた。空腹が彼を苛めていた。遺跡探索で得た報酬は、ビレーの酒場で飲み干すほどの量にしかならず、最近ではその日暮らしすらままならない日が続いていた。
「大穴…見つけたとしても、あの紋章がどう関係するのか…」イシェは呟きながら、壁に刻まれた古びた文字を指さした。「何か呪文みたいだな。触れない方がいいんじゃないか?」
ラーンの胃袋が空腹で鳴り響く音だけが、遺跡の静寂を破った。テルヘルは遠くで何かを調べながら、彼らを不気味な目でじっと見ているようだった。
「おい、イシェ!この紋章、俺に見覚えがあるんだよ!」ラーンは興奮した様子で壁に手を伸ばし始めた。「昔、祖父が遺跡から持ち帰った古い書物に…ああ、もしかして…」
イシェはラーンの行動を止めようと手を伸ばしたが、時遅く、ラーンの指先はすでに紋章に触れていた。
その瞬間、遺跡の奥底から不気味な風が吹き荒れ、壁一面に描かれた紋章が光り始めた。ラーンとイシェはバランスを崩し、転げ落ちた。
「なんだこれは…!」ラーンの声は恐怖で震えていた。
テルヘルは冷静さを保ちながら、何かを唱え始めた。「この紋章…ヴォルダンに関係がある…」