ラーンの豪快な笑い声とイシェのため息が、埃っぽい遺跡の奥深くまで響き渡った。
「本当にここなのか？ この薄暗い洞窟に何かあるとは思えない」
イシェは懐中電灯を振り回し、壁に沿って生えた苔むした菌類を指差した。ラーンは背の高い体で洞窟の天井近くまで届くほどの隙間を覗き込み、満足げに頷いた。
「いや、ここだ。この石畳の模様、以前見つけた古い地図と一致してる。きっと宝が眠ってるはずだ」
イシェは地図を引っ張り出して確認するが、ラーンの言う通り、確かに石畳の模様は地図に記されたものと一致していた。しかし、イシェは依然として懐疑的だった。
「地図は古いし、もしかしたら誤りもあるかもしれない。それに、この遺跡はすでに何人もの探検家たちが調査しているはずだ。残っているものはほとんどないんじゃないか？」
ラーンの瞳は輝きを帯びていた。「そうかもしれないが、俺たちは違うんだ！ 他の奴らとは違う方法で探すんだ！」
彼はポケットから小さな瓶を取り出し、中に入れた赤い液体を石畳に塗り広げた。すると石畳は鮮やかな緑色に発光し、複雑な模様が浮かび上がってきた。
「これはな、俺の秘伝の薬だ！ 遺跡の真の姿を明らかにするんだ」
イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの行動をじっと見守った。彼が何をしているのか理解できなかったが、ラーンの熱意には心を動かされるものがあった。
その時、洞窟奥からテルヘルが声をかけてきた。「何か発見でもあったんですか？」
ラーンの顔に広がる満面の笑みを見て、テルヘルは少しだけ安心した。彼女もまた、この遺跡から何かを得たいと考えていた。それは復讐の糧となる情報や武器かもしれない。あるいは、ヴォルダンへの対抗力となる強力な遺物かもしれない。
「よし、準備はいいか？ これから俺たちが稼ぎ時だ！」
ラーンの言葉に、イシェとテルヘルは互いに視線を交わした。それぞれの想いを胸に秘めながら、彼らは遺跡の奥深くへと足を踏み入れた。