ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑いながら酒を飲んでいた。「おいイシェ、また大穴が見つかったら、お前にはあの宝石店を買い取ってやるって!そうだな、テルヘルも一緒に贅沢三昧だ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの肩を軽く叩いた。「そんな大金、見つかるわけないでしょ。それに、宝石店なんて必要ないわよ。」彼女は冷静に言った。「もっと現実的な計画を立てないと、いつまでたってもビレーから出られないでしょう。」
テルヘルは静かにテーブルの端に座り、酒を一口飲んだ。「二人とも、まだこの世界の仕組みを理解していないようだ。遺跡に眠るものはただの財宝じゃない。それは権力、そして未来への鍵となるものだ。」彼女の目は鋭く光った。「ヴォルダンはそれを知っていて、だから我々は彼らに立ち向かわなければならない。」
ラーンはテルヘルの言葉に少しだけ真剣になった。「ヴォルダンか...確かにあの国とはいつまでも対立しているよな。でも、俺たちには関係ないんじゃないのか?」
「関係あるよ、ラーン」イシェが静かに言った。「ヴォルダンの影が、エンノル連合全体を覆い始めてるんだ。遺跡の争奪戦も、その一つに過ぎない。」
ラーンの表情が曇り始めた。彼は自分が無意識のうちに、テルヘルの計画に巻き込まれていくことに気づいていた。彼女の言葉には、どこか説得力があったのだ。
「よし、わかった」ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。「お前たちの言う通りだ。ヴォルダンに立ち向かうぞ!そして、ビレーから出るんだ!」
イシェはため息をつきながらも、ラーンの決意に少しだけ希望を感じた。テルヘルは満足げに微笑みながら、彼らに言った。「では、準備を始めよう。次の遺跡へ向かう前に、ある人物に会いに行かなければならない。」
その人物とは誰なのか、イシェにはまだ分からなかった。しかし、彼女は何か大きなことが始まる予感を感じていた。そして、それは自分たちの運命を大きく変えるものになるだろうと感じた。