ラーンの大口はいつも通りだった。「今回は絶対に見つかる!あの遺跡の奥深くには、金貨の山が眠っているって聞いたんだ!」彼の目は輝き、イシェはため息をついた。
「またそんな話?」
ビレーの小さな酒場で、ラーンは熱心に語っていた。イシェは、彼を少し見下すような視線で一杯の酒を傾けた。「あの遺跡は何度か探索したわよ。何もないってわかったじゃない。」
だが、ラーンの言葉はいつも通りにイシェの心を揺さぶった。彼の情熱は偽物ではない。そして、イシェ自身も、いつか「大穴」と呼ばれるような巨大な財宝を掘り当てたいと願っていたのだ。
その時、扉が開き、テルヘルが颯爽と店に入ってきた。「準備はいいか?」彼女の鋭い視線はラーンとイシェに釘付けになった。「今日は特別だ。ヴォルダンとの取引で手に入れた情報がある。あの遺跡の奥深くには、特別な遺物があるらしい。」
イシェは驚いた。テルヘルがヴォルダンの情報を得たとは。彼女はいつも冷静で、目的を達成するために手段を選ばない女性だった。
「どんな遺物なのか?」ラーンが興奮気味に尋ねた。
テルヘルは少し微笑んだ。「それは秘密だ。だが、君たちの報酬は倍にする。」
イシェはラーンの興奮を抑えきれず、彼の腕を掴むように言った。「本当に大穴が見つかるかもしれないわ。」
ラーンの目は輝き、イシェの心にもわずかな希望が芽生えた。しかし、テルヘルの言葉の真意は分からなかった。彼女の目的とは何か?そして、その遺物は本当に価値があるのか?イシェは、まるで秤のように揺れ動く自分の心を抑えきれず、胸を締め付けるような不安を感じた。