ビレーの朝焼けが、埃っぽい空気を紅く染めていた。ラーンは、いつもより早く目を覚ましてイシェを起こした。「今日はテルヘルが待ってるぞ、急げ！」
イシェは眠い目をこすりながら、「また遺跡か…」と呟いた。ラーンの熱意にはついていけないことも多かったが、今回の依頼は高額な報酬だった。それは彼らにとって大きな意味を持つ。
テルヘルは、いつもより冷たい表情で待っていた。「今日は特別だ」と告げた。彼女の言葉に、ラーンとイシェの視線は集まった。「今回は、秘蹟の眠る場所へ行く」
「秘蹟？」ラーンの顔色が変わった。秘蹟とは、古代文明が残した超常的な力を持つ物。伝説の話だと思っていた。
「その場所には危険が伴うだろう。だが、報酬は十分だ」テルヘルは冷静に言った。「お前たちは、私の指示に従い、秘蹟を手に入れるために協力するのだ」
ラーンとイシェは互いの顔を見合わせた。冒険心と不安が入り混じった表情だった。遺跡の奥深くへと続く洞窟。そこには、古代の呪文が刻まれた壁画が広がっていた。
「ここだ…」テルヘルは壁画を指さした。「秘蹟はこの裏にある」
イシェは、壁画に描かれた複雑な模様を注意深く観察した。そこに何かを感じ取った。それは、まるで古代の知識が彼の中に流れ込んできたようだった。彼はラーンに「ここは俺たちが行くべき場所じゃない…何かがおかしい…」と訴えた。
しかし、ラーンの目は秘蹟への執念で輝いていた。「大丈夫だ、イシェ！この遺跡を制覇するぞ！」
テルヘルは、二人が疑いを持つ様子を見て、「迷う必要はない」と冷たく言った。「秘蹟を手に入れることが、お前たちの未来を変えるのだ」
ラーンとイシェは、テルヘルの言葉に背中を押され、洞窟の奥へと進んでいった。彼らの足音だけが、静寂な遺跡の中で響き渡る。しかし、彼らを待ち受ける運命は、想像をはるかに超えていた…。