ラーンが巨大な石扉をこじ開けると、埃っぽい空気が部屋の中に充満した。イシェは咳き込みながら、鼻をつまんだ。「またここか？」と呟くと、ランプの光を当てて部屋の中をくまなく探り始めた。
「なんだよ、イシェ。こんな場所じゃ秘跡なんて出ないだろ」ラーンは石柱に寄りかかり、不機嫌そうに言った。テルヘルは彼らをじっと見つめていた。「まだ早計です。この遺跡には何か秘密が隠されているはずです。我々は時間をかけて探す必要があるでしょう」と冷静に言った。
イシェは、壁に沿って書かれた複雑な記号に目を凝らしていた。「この記号…どこかで見たことがあるような…」彼女は呟いた。その時、ラーンの足元に光るものがあることに気が付いた。「おい、これ見てみろ！」ラーンが床に落ちている小さな金属片を拾い上げた。
それは、星型をした不思議な金属片だった。表面には複雑な模様が刻まれており、かすかに光を放っている。「何だこれは…」イシェは興味深そうに金属片を手に取った。その瞬間、部屋の空気が一変した。床から冷たい風が吹き出し、壁に描かれた記号が輝き始めた。
「これ…秘跡？」イシェは目を丸くして言った。ラーンとテルヘルも息をのんで部屋を見渡した。金属片が放つ光は、まるで部屋の奥底にある何かを呼び覚ますようだった。
その時、突然、石柱から不気味な音が響き始めた。「おい、何だあの音？」ラーンの声が震えていた。石柱の上部から、黒い影がゆっくりと現れた。それは巨大な怪物のような姿で、赤い光を放つ目玉が鋭く輝いている。
「逃げろ！」テルヘルが叫び、剣を抜いた。ラーンも慌てて剣を構えた。しかし、怪物は既に動き始めていた。その巨体、そして放つ悪夢のような気配は、三人に絶望の影を落とすように迫っていた。