ラーンの大斧が朽ちた石柱に激突した。埃が舞い上がり、一瞬、視界が遮られた。イシェは咳き込みながら「また無駄な力加減だ。あの石柱、一体何なんだ？」と呟いた。
ラーンは苦笑いを浮かべ、「まあ、宝のありかを示すヒントになるかもしれないと思ってさ」と答えた。
彼らはビレーから北へ数日の道のりを歩いた遺跡にたどり着いた。テルヘルが持ち込んだ古い地図によると、ここはかつてヴォルダン帝国の支配下にあり、ある秘宝を隠したという噂があった。だが、地図には具体的な場所や内容についての記述はなく、あくまでも「ここに何かがある」という曖昧な情報しか得られなかった。
イシェは眉間にしわを寄せ、「この遺跡はヴォルダンが造ったものかもしれない。あの地図も偽物かも…」と呟いた。
ラーンの表情が曇った。「そんなことないさ。テルヘルが言うには、この地図は彼女の家族の代々受け継がれてきたものだ」
テルヘルは背を向けて遺跡の壁を調べていた。「私の祖先はヴォルダンに滅ぼされた。この地図は復讐のために残されたものだ」と冷たい声で言った。
イシェはテルヘルの言葉に何かを感じ取ったようだった。彼女はラーンの目を見つめ、「あの地図には何か秘密が隠されているかもしれない」と静かに言った。「何か、ヴォルダン帝国だけが知っている秘話のようなものが…」
ラーンは頷いた。彼の胸には不吉な予感がした。この遺跡、そしてテルヘルが追いかける復讐の物語には、彼らが想像するよりもずっと深い闇が潜んでいると感じた。