ラーンが遺跡の入り口で鼻歌を口ずさむのをイシェが睨みつけるように見つめていた。
「また大穴だなんて言ってないか?あの宝の山はただの噂だろう。」
ラーンの肩を軽く叩くテルヘルの声に、イシェは小さくため息をついた。
「まあ、そんな夢物語を信じてるのは、ラーンだけじゃないわ」
テルヘルは薄ら笑いを浮かべた。彼女の目は遺跡の奥へと向けられていた。そこには、誰も見たことのないような複雑な文様が刻まれた石の扉があった。
「今回の依頼は違う。あの扉を開けるための鍵が必要だ。そして、その鍵は…」
テルヘルが言葉を濁すように目を伏せた時、ラーンが興奮した声で叫んだ。
「おい、イシェ!あの遺跡の奥に、何か光ってるぞ!」
イシェはラーンの指さす方向を見つめた。確かに、石の扉の隙間から、かすかに青い光が漏れているようだった。
「まさか…」
イシェは息をのむ。彼女は自分の秘めたる知識を思い出す。かつて、古い文献で読んだ伝説の話…。あの伝説の「光」と、この遺跡に眠る秘密は一体…?
ラーンの興奮を抑えきれない様子を見て、テルヘルは小さく頷いた。
「そう、まさにあの光だ。そして、鍵は…」
テルヘルはイシェに目を向け、意味深な笑みを浮かべた。
「我々の秘策の時が来たようだ」