「よし、今回はあの奥の部屋だな。イシェ、地図確認して」
ラーンが豪快に笑う。イシェは眉間に皺を寄せながら、薄暗い遺跡の奥深くに広がる迷路のような通路の地図を指さした。
「あの部屋だと、以前の記録で記述があった通り、床板の下に何かが隠されている可能性が高い」
「おおっ！もしかして宝箱か！？黄金の山だ！」
ラーンの目が輝き、イシェはため息をついた。いつも通りのパターンだ。
テルヘルは静かに周囲を警戒していた。彼女の視線は、壁のひび割れや天井から垂れ下がった鍾乳石にも向けられ、常に危険を察知しようとしていた。
「ここはヴォルダン軍が以前調査した可能性が高い。罠が残されているかもしれない」
彼女の言葉に、ラーンは少しだけ表情を曇らせた。
「大丈夫だ、テルヘル。俺たちにはイシェがいるだろ？あの頭脳があれば、どんな罠もかわせる」
ラーンの言葉に、イシェは苦笑する。確かに彼女は遺跡の構造や古代の技術に関する知識が豊富だった。しかし、今回の遺跡は今までとは違う何かを感じていた。
彼らは慎重に奥へ進み、ついに秘められた部屋の前にたどり着いた。厚い石板で塞がれた扉には、複雑な模様が刻まれていた。
「これは…？」
イシェは眉をひそめた。「見たことのない記号だ。何かしらの秘法を使う必要があるのかもしれない」
テルヘルは冷静に状況を判断した。この遺跡はヴォルダンとの関係が深いことは明らかだった。そして、彼女はこの遺跡に隠された秘密、そしてヴォルダンの弱みに繋がるものがあると確信していた。
「待て」
彼女は手を上げ、ラーンとイシェの動きを止めた。「この部屋には何か特別な力がある。慎重に進もう」
彼女の目は、扉に刻まれた記号を見つめていた。それは単なる装飾ではなく、何かの力を秘めているような気がした。