「おい、イシェ、今日はどこ行くんだ?」ラーンが寝起きの目を擦りながら言った。イシェは食卓に並べたパンを小さく切って、淡々と答えた。「いつものように南の遺跡群だ。テルヘルからの依頼状には『古代の地図』と記されている。詳細不明だが、価値がありそうだと判断した。」
ラーンの顔色が明るくなる。「やった!また大穴が見つかるかもな!」
イシェは微笑ましそうに首を傾げた。「いつも大穴ばかり夢見ているから、いつになったら現実を見るんだい?今日は特に注意が必要だ。テルヘルが言うには、その遺跡はヴォルダン軍の監視下にあり、危険が高いらしい。」
ラーンは少しだけ顔色が曇ったが、すぐにいつもの明るい表情に戻った。「大丈夫だって!俺たちにはイシェがいるんだからな!」そう言って、彼は剣を手に取り、イシェの後ろから出発した。
二人はいつも通り、ビレーの裏手にある古い廃墟へと向かった。そこはかつて鉱山として栄えた場所だったが、今は誰も住んでいない。ラーンとイシェにとっては、秘密基地のような場所だった。廃墟の奥に隠された狭い部屋には、地図や道具、そしてテルヘルからの依頼状が保管されていた。
「今日は特に警戒が必要だ。」イシェは地図を広げながら言った。「ヴォルダン軍は遺跡周辺を厳重に監視しているらしい。テルヘルによると、彼らは何か重要なものを探しているらしい。」
ラーンは地図を指差しながら言った。「よし、じゃあ、あの崩れた通路から侵入しよう!そしたら、ヴォルダン軍の目を避けられるぞ!」イシェはため息をつきながら頷いた。ラーンの計画はいつも大胆で、危険ばかりだが、なぜかいつもうまくいく。
廃墟を出ると、そこは広大な遺跡群が広がっていた。崩壊した石造りの建物や巨大な石碑が、緑に覆われた丘陵地帯に点在している。太陽が燦々と降り注ぎ、遺跡全体を照らしていた。
二人は廃墟から抜け出すと、すぐにヴォルダン軍の兵士の姿を見つけた。彼らは武装し、厳かに遺跡を監視していた。ラーンはイシェに小声で言った。「よし、計画通りだ!」
二人は素早く近くの茂みに身を隠した。イシェは緊張した表情で周囲を見回し、ラーンは小さく拳を握りしめていた。
「よし、行くぞ!」ラーンの声が響き渡る。二人は息を潜めて、ヴォルダン軍の目を盗みながら遺跡へと潜入していった。