「よし、今回はあの崩れかけた塔だ」ラーンが地図を広げ、指で場所を示した。イシェは眉をひそめた。「また危険な場所かい? 以前あのあたりで起きた事故を聞いたことがあるんだけど…」
「大丈夫だって、テルヘルが言うんだろ?」ラーンは自信満々に笑った。テルヘルは冷静に言った。「情報によると、塔の最上階には未開の部屋があるらしい。そこには貴重な遺物か、あるいは危険な罠が隠されている可能性もある」
イシェは不安げに振り返った。「あの塔は呪われているって噂があったはずよ…」
「そんなものは迷信だ」ラーンは軽やかに剣を構えた。「さあ、大穴が見つかるかもしれないぞ!」
三人はビレーの街を出発し、崩れかけた石畳の道を行った。塔は山の斜面にそびえ立ち、日差しに焼けた岩肌が不気味な影を落とす。
「ここに入るには、あの崩れた壁を乗り越えないといけないな」ラーンが壁を見上げると、イシェは不安そうに言った。「あの崩れそうな壁を登るなんて…」
「大丈夫だ、俺がいるだろ?」ラーンはイシェの手を取り、軽々と壁を登り始めた。テルヘルは後ろから静かに続く。
塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。床には石畳が敷かれているが、ところどころ崩れかかっており、足元を確かめながら進む必要があった。
「ここからは慎重に」テルヘルがささやいた。彼女の視線は鋭く、壁のひび割れや天井の崩落跡をよく見ているようだった。
彼らは塔の最上階へと続く階段を登り始めた。階段は狭く、ところどころ欠けている箇所があった。ラーンが先頭を歩き、イシェとテルヘルが後を続いた。
「ここには何かあるはずだ」ラーンは興奮気味に言った。「あの地図の記述によると、この部屋には…」
その時、突然、壁から音がした。イシェは驚いて振り返った。壁のひび割れから、赤い光が漏れているのが見えた。
「な、なんだあれ?」
イシェの声を聞いたラーンとテルヘルも振り返ると、その赤い光に目を奪われた。光が強くなり、壁の一部が崩れ落ちた。そこに現れたのは、石でできた巨大な扉だった。扉には複雑な模様が刻まれており、赤い光はそこから溢れ出ていた。
「これは…」テルヘルは息をのんだ。「見たこともない記号だ…もしかしたら、あの秘密の部屋への入り口なのかもしれない」
ラーンの目は輝いていた。「よし、開けてみよう!」
しかし、イシェは不安げに言った。「でも、あの光…何か悪い予感がする…」
ラーンは気にせず、扉に手を伸ばした。その時、扉の上部から、かすかな声が聞こえた。
「…危険…近づくな…」
ラーンの手は止まった。彼は振り返り、イシェとテルヘルを見た。三人の顔には、それぞれ異なる感情が浮かんでいた。