日差しが斜めに伸びてくる頃、ビレーの街を見下ろす高台にある廃墟から、イシェの視線はラーンに向けられていた。彼はいつものように、大げさなポーズで宝探しの真似事をしていて、イシェはため息をついた。
「また無駄な動きをしている…」
ラーンの背後には、テルヘルが静かに佇んでいた。彼女の鋭い眼差しは、廃墟の奥深くに伸びる暗い通路に注がれているようだった。
「今日の探索はここまでにするべきだ」とテルヘルは言った。「日が暮れる前にビレーに戻らなければならない。ヴォルダンとの国境付近は危険な時間帯になる」
ラーンは渋々頷きながら、腰に下げた剣を拭った。イシェが彼をじっと見つめていたことに気づくと、ラーンの表情が少し曇った。
「何だ？何か言いたいことでもあるのか？」
イシェは少しだけ言葉を詰まらせた。ラーンの視線は、まるで彼女の瞳の奥に何かを見つめているようだった。
「いいえ…何も」
イシェは視線をそらし、廃墟の崩れかけた壁を指さした。「あの遺跡の奥には、以前から噂されていた古代の地図があるという話があった。今回はそこを目指してみるべきだ」
ラーンは一瞬だけ、イシェの顔を見つめた後、小さく笑った。
「そうか、地図か…もしかしたら大穴へのヒントが隠されているかもしれないな！」
テルヘルは眉をひそめた。「地図はあくまで噂に過ぎない。無駄な時間を過ごすよりも、より確実な情報を集めるべきだ」
イシェはテルヘルの言葉に反論しようとしたが、ラーンの視線を感じた。彼の瞳には、どこか遠くを見つめているような、切ない光が宿っていた。
「今回は地図を探してみよう。イシェの言う通りだ、もしかしたら大穴へのヒントが見つかるかもしれない」
イシェはラーンの言葉に驚きながらも、少しだけ安心した気持ちになった。彼女はラーンの瞳の中に、彼女自身も気づいていなかった何かを感じ取ったような気がしたのだ。それはまるで、秋風に揺れる枯れ葉のように儚く、そして強く心を掴むものだった。
日が沈み始めるとき、３人は廃墟の奥へと足を踏み入れた。夕暮れの光が、彼らを包み込むように差し込み、廃墟の壁には長く伸びる影が映し出された。