「おい、ラーン、あの石碑は何だ?」イシェが指さす方向には、苔むした石碑が倒れかかったように立っていた。奇妙な模様が刻まれており、ラーンの知識では解読できないものだった。
「知らねえよ。でも、なんか禍々しい雰囲気だな」ラーンは剣を構えながら近づき、石碑の表面を軽く叩いてみた。「硬いぞ。何でできてるんだ?」
「触るな!あそこは触っちゃいけない!」イシェが慌ててラーンの腕を引き戻した。「あの記号…どこかで見覚えがあるような…」
その時、石碑から不気味な光が放たれ、地面に描かれた複雑な模様が浮かび上がった。ラーンは思わず目を背けたが、イシェは目を輝かせながら模様をじっと見つめていた。
「これは…禁断の魔術陣だ!」イシェの声は震えていた。「この遺跡には、何か恐ろしいもの眠っているのかも…」
「怖い話するなよ、イシェ」ラーンは強がって笑ったが、背筋がゾッとする感覚を無視できなかった。「でも、もし本当に危険なものなら、テルヘルに知らせないと…」
その時、石碑からさらに強い光が放たれ、地面の模様が激しく脈打つようになった。ラーンの足元から黒い煙が立ち上り、不気味な影が彼らを取り囲んだ。
「やばい…逃げろ!」イシェは叫びながらラーンの腕を引っ張ったが、ラーンは足が動かない。まるで何か見えない力に縛られているようだった。
「くっ…!」ラーンの顔から汗が流れ落ちた。彼の目は恐怖で大きく見開かれていた。
イシェは必死にラーンを助けようと試みるが、黒い影が彼女にも迫りくる。その時、テルヘルが遺跡の入り口から現れた。彼女は冷静な表情で、両手に光る短剣を構えていた。
「待たせすぎたな」テルヘルは冷たい声で言った。「この遺跡には、私が手に入れるべきものがある」
黒い影がテルヘルに襲いかかるが、彼女は素早い動きでそれをかわし、短剣を振り下ろした。鋭い光が影を貫き、一瞬にして消滅させた。
「ラーン、イシェ、逃げろ!」テルヘルは叫びながら、再び影に向かって飛び込んだ。
ラーンとイシェは戸惑いながらも、テルヘルの言葉を信じ、遺跡から逃げることを決意した。しかし、振り返ると、石碑からさらに強い光が放たれ、遺跡全体が闇に包まれていった。
そして、その闇の中に、何か恐ろしいものが目を覚ましたのだった…