ビレーの酒場で賑やかな笑い声と喧騒が渦巻く中、ラーンはイシェに目を細めて言った。「おい、イシェ、あの大男が見てるぞ。またあの話か?」
イシェは視線をそらさず、静かに杯を傾けた。「気にすんな。あいつはいつもそうだし、今日の仕事が終わればビレーから出るんだろ?もう用はない」
ラーンの顔に不機嫌な影が走った。「そうだな。でもな、あの話…本当なのかもしれんぞ。遺跡の奥深くで、禁じられたものが見つかったって噂だぜ」
イシェは眉をひそめた。「そんな話は聞いたことがない。それに、禁令に触れるような場所には近寄らないのが筋だろう」
ラーンの瞳に、冒険心を燃やす炎が揺らめいた。「でもな、もしあの噂が本当なら…」
その時、背後から冷たく響く声がした。「二人は遺跡探索の仕事に向かうつもりか?」
ラーンとイシェは振り返ると、テルヘルが鋭い視線で二人を見下ろしていた。彼女の口元に薄暗い笑みが浮かんでいた。
「ああ、準備は万端だ」とラーンは力強く言った。イシェはテルヘルの目を見て、何かを察したようだった。
彼らは遺跡へと向かう途中、禁令にまつわる噂話に耳を傾け続けた。禁断の知識や力を秘めた遺跡の存在、そしてそれを守るために設けられた禁忌。彼らの前に広がるのは、危険と誘惑が渦巻く未知の世界だった。
「あの遺跡には近づかない方が良い」イシェはラーンの腕を引っ張り、警告を発した。「何か悪い予感がするんだ」
しかしラーンは耳を貸さなかった。彼の瞳は輝き、冒険心を抑えきれないでいた。