ビレーの広場には、今にも祭式が始まるかのような熱気が漂っていた。色とりどりの旗が翻り、露店が立ち並び、人々の笑顔があふれかえっている。ラーンはイシェとテルヘルを連れて、賑わいを避けようと路地裏に入った。「ここなら少し落ち着いて話せるだろう」とラーンの言葉に、イシェはため息をついた。
「祭式が始まる前に遺跡の話を持ち出すなんて、ラーンらしくないよ。せめて今日は気分を盛り上げようよ」
「そうだな、イシェ。おっしゃる通りだ」ラーンはニヤリと笑った。「だがテルヘルさん、あの遺跡について話したかったんだろ?僕たちは祭式が終わったらすぐに準備を始められる」
テルヘルは鋭い目で二人を見据えた。「いいだろう。だが、この祭式には何か意味があるのではないかと思う。ヴォルダンとの関係、そしてこのエンノル連合の現状を考えると…」
彼女の言葉は、祭りの喧騒を背に、重く響き渡った。イシェは不安げにラーンを見つめた。ラーンの楽観的な笑顔はどこか薄れかけていた。彼もまた、テルヘルの言葉が示す影を感じ取っていたのだ。
「よし、今日は祭りを楽しみながら、情報を集めてみよう」ラーンはそう言うと、力強くイシェの手を握りしめた。「どんな困難があっても、僕たち三人で乗り越えよう」その言葉に、イシェとテルヘルは小さく頷いた。祭りの灯火が夜空を照らし出す中、三人はそれぞれの思いを抱きながら、未来へと歩み始めた。