「よし、今日はあの崩れかけた塔だな!地図によると、中腹あたりに何か埋まってるらしいぞ!」ラーンの腕が力強く振るわれ、大きな剣が空気を切る音とともに示す方向は、いつも通りのビレーの郊外にある遺跡だった。イシェはため息をつきながら地図を広げた。「また大穴か?ラーン、あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。崩落する可能性もあるし、罠仕掛けられた場所もあるって」
「大丈夫だよ、イシェ!俺が行くから!」ラーンの豪快な笑いは、イシェの不安をさらに増幅させた。だが、ラーンの後を追いかけるようにテルヘルが口を開いた。「私が先に行く。危険な場所にはすぐに対応できるよう準備はしておく。」彼女の言葉は冷静で、鋭い視線は周囲を見渡しながら警戒を怠らなかった。
「まあ、テルヘルが一緒なら安心だな!」ラーンはそう言うと、イシェに手を差し伸べた。「ほら、行こうぜ!今日は大穴が見つかる予感しかしない!」イシェは深くため息をつきながらラーンの手に捕まり、遺跡へと足を踏み入れた。
崩れかけた塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が鼻腔を刺激する。足元には石ころが散らばり、一歩一歩慎重に進む必要があった。イシェは不安を抱えながらも、ラーンの背中に寄り添いながら進んだ。テルヘルは常に先頭を歩き、鋭い眼光で周囲を警戒しながら進んでいた。
塔の中ほどまで進むと、壁面には奇妙な模様が刻まれていた。まるで祭事の際に用いられたようなシンボルだった。イシェは興味津々に近づいてよく見てみると、模様の中に小さな凹みが一つあった。
「これは…何か鍵になるのかな?」イシェは呟きながら指で凹みをなぞった。その瞬間、壁に隠されていた仕掛けが作動し、床の一部が下へ沈み始めた。ラーンは驚き声をあげたが、テルヘルは素早く剣を抜き、崩れ落ちようとする床板を支えた。「気をつけろ!」テルヘルの鋭い声が響き渡る中、三人は急いで後ずさった。床が完全に沈んだ場所には、階段が続いているのが見えた。
「何だこれは…」ラーンの声は興奮気味だった。イシェも緊張感の中にも、探検心と好奇心が湧き上がってきた。「これは一体どこにつながっているのかしら…」。テルヘルは冷静な表情で階段を見下ろした。「ここは、遺跡の真の入り口なのかもしれない。」と彼女は呟いた。
祭りのシンボル、隠された仕掛け、そして新たな通路…。イシェは、この遺跡がただの宝の山ではなく、何か大きな秘密を秘めていると感じ始めた。それは、ビレーの小さな祭事にもつながるような、もっと大きな物語の一部だったのかもしれない。