ビレーの広場には、色とりどりの屋台が立ち並び、陽気な音楽が流れ出す。祭りの準備が始まったのだ。ラーンとイシェは、いつもより活気のある街を歩きながら、テルヘルに声をかけた。
「今日は祭りか。いい雰囲気だな」
ラーンの笑顔に、テルヘルは少しだけ口角が上がったりする。
「お前たちには関係ないだろう。早く遺跡へ行く準備だ」
イシェはテルヘルの冷たい態度に慣れているが、それでも少し憂鬱な気分になった。祭りはいつも人々の心を温かくしてくれるのに、テルヘルにはそんな余裕がないようだ。
「よし、わかったよ。イシェ、今日は特に注意深く見てろ。あの遺跡は危険だって聞いたんだ」
ラーンの言葉に、イシェは頷く。テルヘルが依頼した遺跡は、いつもより複雑で危険な雰囲気を漂わせていた。祭りの賑やかさと裏腹に、彼らの心には緊張感が張り詰めていた。
「よし、行くぞ!」
ラーンは、祭りの喧騒を背に、遺跡へと足を踏み入れた。イシェは彼を見つめ、静かに続く。テルヘルは、二人の後ろを歩きながら、どこか遠くを見つめているようだった。
遺跡の中は暗く湿っていた。石畳の床には苔が生え、壁には奇妙な模様が刻まれていた。ラーンは、いつも通りの調子で剣を構えて進むが、イシェは何かを感じて背筋がぞっとした。
「何かいるのか?」
イシェの言葉に、ラーンも静かに周りを見回す。しかし、そこには何もいなかった。
「気のせいだろう」
そう言うと、ラーンは再び歩き始めた。しかし、イシェはまだ不安な気持ちから抜け出せなかった。祭りの喧騒を思い出すと、この遺跡の不気味さがより際立って見えてくるようだった。
彼らは遺跡の奥深くまで進んでいく。そして、ついに宝箱を発見する。
「やった!これで大穴だ!」
ラーンの興奮が伝わる。イシェも少し安心した。しかし、その時だった。
突然、壁から何者かが現れ、ラーンに襲いかかる。イシェは驚いて叫んだ。
「ラーン!」
テルヘルは素早く剣を抜いて、敵を倒す。その動きは速く正確で、まるで踊っているようだった。
「お前たちは何をしているんだ?」
敵の姿は消え去った後も、テルヘルは冷たく言った。イシェは混乱していた。なぜ、ここで敵が現れたのか?そして、テルヘルは何を知っているのか?
「ここは危険だ。すぐにこの遺跡から出るべきだ」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは頷く。祭りの喧騒が聞こえてくるはずなのに、彼らはもうその世界には戻れないような気がした。
遺跡から脱出する時、イシェは振り返った。祭りの音は聞こえなくなっていた。代わりに、静寂だけが広がっていた。そして、イシェは何かを悟った。テルヘルは、この遺跡で何かを探している。そして、それは単なる宝ではないのかもしれない。