「よし、今回はあの崩れかけた塔だな！」ラーンの元気な声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せながら、「また荒れ果てた場所？ 遺跡探検だって計画性が必要だぞ。」と呟く。
ラーンが「大穴」を見つける夢に燃えていることは、イシェもよく知っていた。だが、その夢の実現には、単なる運だけでは足りないことも理解していた。それでも、ラーンの熱意に巻き込まれるように、今日も遺跡探索へと足を踏み出すのだ。
そこに、彼らの前に立ちはだかる影があった。テルヘルだ。「今日はあの塔へ行くようだ。準備はいいか？」彼女の冷たい視線は、まるで獲物を見据える獣のようだった。イシェは背筋が寒くなるのを感じた。
塔の中は、崩れ落ちた石と埃で満たされていた。薄暗い空間を照らすのは、ラーンの持ってきた松明の火のみだ。「ここには何かあるはずだ！」ラーンは目を輝かせながら、石を蹴飛ばした。
「待て、ラーン。」イシェが制止するが、ラーンの耳には届かなかった。その時だった。壁に描かれた奇妙なシンボルが、かすかに光り始めたのだ。それはまるで、忘れられた神々が眠る場所を示す暗号のようだった。
テルヘルは目を細め、「これは…」と呟いた。彼女はかつてヴォルダンで見た、ある古代の書物の中に同じシンボルを見たことがある。その書物は「神託」にまつわるものだった。
「この塔には何か重要なものがあるはずだ。」テルヘルはそう言い放ち、ラーンを制止するイシェの手を振り払った。
三人でシンボルの謎を追うように塔の奥深くへと進んでいく。その先に待ち受けるものは、果たして「大穴」なのか？それとも、神々の怒りを招くものなのか？