ラーンが巨大な石の扉を押し開けると、埃っぽい空気が流れ込んだ。イシェは鼻をつまんで「またこんな場所か…」と呟いた。広がるのは朽ち果てた神殿の内部だった。壁には剥げ落ちかけたフレスコ画が残り、かつて栄華を極めた文明の痕跡を静かに物語っていた。
「よし、今回は俺が先頭だ!」ラーンは意気揚々と奥へと踏み込んだ。イシェはため息をつきながら後を追う。テルヘルは二人が進むのをじっと見つめていた。彼女の目は鋭く、何かを探しているかのようだった。
「ここには何かあるはずだ」とラーンは、崩れた柱の陰を覗き込む。イシェは慎重に足元の石畳を確かめながら、ラーンの背後についていった。「何だ?また宝の地図か?」
「違うぞ!今回は違う!」ラーンの声は興奮気味だった。「ここには何か…特別な力を感じるんだ」
テルヘルは静かに頷いた。「そうかもしれない。この遺跡は、かつて神罰によって滅ぼされた文明のものだと伝えられている。遺物の中には、その力を宿したものが存在する可能性もある」
ラーンの目は輝きを増した。「神罰の力か…!それを使えば、俺たちは…」
イシェは不安げな顔でラーンを見つめた。「そんな危険なものは触らない方がいいんじゃないのか?」
しかしラーンの耳には届いていなかった。彼はすでに奥へと進んでおり、石畳の上を激しく踏み鳴らしていた。彼の足元では、一枚の石板が崩れ落ち、そこから不気味な光が漏れてきた。
テルヘルは少しだけ唇を動かした。「始まったか…」と呟いた。イシェはラーンの後ろ姿を見つめ、何かが壊れるような予感がした。