ラーンの大斧が岩盤を砕き、埃が立ち込める中、イシェは薄暗い遺跡の奥深くを見据えた。
「ここまできたら、何かあるはずだ」とラーンは息を弾ませた。だがイシェは彼の興奮に冷や水を浴びせるように言った。「遺跡の地図には記されていない場所だな。何か罠があるかもしれない」
その言葉通り、次の瞬間、地面が崩れ始め、ラーンは驚愕した。
「うわああ!」
イシェが素早くラーンの腕を掴み、近くの柱に引っ張りつけた。崩落は止まらず、彼らが立っていた場所は一瞬で奈落と化した。
「やれやれ…」イシェはため息をつきながら、崩れた壁の隙間から外の様子を伺った。「運がいいな、まだ出口が開いている」
ラーンの顔色は青白かった。「あの落下…一体何が起こったんだ?」
イシェは慎重に崩れた壁をよじ登り、振り返ると、そこに奇妙な光景が広がっていた。彼らの足元には、まるで空中に浮かぶように、淡い光を放つ球体が一つ転がっていた。球体はゆっくりと回転し、その表面には複雑な模様が刻まれていた。
「これは…!」イシェは言葉を失った。あの崩落は、この球体と何か関係があるに違いない。そして、この球体が発する神秘的な光は、彼らに何をもたらすのか?
ラーンの視線は、その光に吸い込まれるように動いた。「大穴…これはもしかしたら…」
イシェはラーンの興奮を察し、静かに言った。「慎重になさい。あの光には何か秘密が隠されているかもしれない」
テルヘルは遺跡の入り口で二人の様子を見つめていた。彼女の手には古い書物があり、そこには球体の絵と、その力を解き放つ方法が記されていた。
「ついに始まったか…」彼女は小さく呟き、唇を歪ませた。ヴォルダンへの復讐を果たすために、あの球体が必要だった。そして、それを手に入れるためには、ラーンとイシェを利用するしかなかった。