ラーンが石を投げ飛ばし、崩れた壁の奥深くへ響き渡らせた。埃が舞う中、イシェは眉間に皺を寄せながら小さなランプを照らし、「本当にここなのか？ そんな場所にあるわけないだろう」と呟いた。
「ほら、聞いただろ？ この辺りに神殿の跡があるって！ お宝がいっぱい眠ってるらしいぞ！」ラーンは目を輝かせ、剣を片手に興奮気味に言った。イシェはため息をつきながら、石畳の上を慎重に歩いた。「噂話に騙されるなと言っただろう。テルトヘルがそんな話を持ち出した時点で怪しいって…」
「でも、大穴が見つかったらどうだ！ 俺たち、楽になるぞ！」ラーンの目は夢心地で、イシェの言葉は届いていなかった。テルヘルは背後から静かに、「見つかったら、半分は私物にする」と冷たく言った。
壁の奥深くへ進むにつれて、空気が重くなっていった。湿り気とカビ臭い匂いが漂い、石畳には奇妙なシンボルが刻まれていた。イシェは背筋をゾッとするような感覚に襲われた。「ここは…何か違うぞ…」
その時、ラーンの足元が崩れ、大きな穴が開いた。ラーンは思わず叫び、下に落ちていく。イシェは慌てて手を伸ばしたが、届かなかった。
「ラーン！」
イシェは駆け寄るが、穴の縁に立って見下ろすことしかできなかった。深い闇の中で、かすかにラーンの声が聞こえた。「イシェ…助けて…」
テルヘルは冷静に状況を判断し、「大丈夫だ。ロープを下ろして助け出す」と切り出した。しかし、イシェは不安げに言った。「でも、あの穴…何かおかしいよ…」
テルヘルは振り返り、イシェの目をじっと見つめた。「神殿跡だとしたら、危険な場所かもしれない。だが、ラーンを助けるためならリスクを冒す価値がある」と彼女は言った。そして、自分の持つ知識と経験を頼りに、危険な遺跡探検へと足を踏み入れた。