「よし、入ろう!」
ラーンが興奮気味に石の扉を押すと、埃っぽい風が吹き出した。イシェは鼻をつまんで扉の隙間を覗き込む。
「あの奥に見えるのは、本当に遺跡の一部か?」
「ああ、間違いなく。古代文字らしきものが刻まれてるぞ」
テルヘルが近づき、指で文字に触れるように見下ろす。「この遺跡は、神域に近接している可能性が高い。貴重な遺物があるかもしれない」
ラーンの目は輝き、イシェもわずかに息をのんだ。彼らはビレーの辺境で遺跡を探検し、日雇いの報酬を得て生計を立てていた。大穴と呼ばれる伝説的な遺跡、それが彼らを駆り立てる夢だった。
「よし、準備はいいぞ!」ラーンが剣を構え、イシェも小さな短刀を手に取る。テルヘルは影のように彼らの後ろに付き、鋭い視線で周囲を見渡す。
遺跡内部は薄暗く、湿った冷気が漂っていた。崩れかけた石柱や壁画が点在し、かつて栄華を極めた文明の痕跡を伺わせた。彼らは慎重に足を進め、落とし穴や仕掛けがないか警戒する。
「ここには何かいる…気配を感じる」イシェが突然静かに呟いた。ラーンの表情が曇る。「何だ?」
テルヘルは耳を澄ませると、かすかなざわめきのような音を感じた。「誰かがいるようだ。用心しろ」
彼らは緊張感の中で石畳の上を進み、やがて広間に出た。そこには巨大な祭壇があり、中央には光る球体が鎮座していた。神域の遺物、それは何世紀にもわたって人々を魅了し続けてきた伝説的な宝物だった。
「これは…」イシェが言葉を失った。ラーンの瞳は貪欲に輝き、テルヘルも静かに息を呑んだ。
しかし、その瞬間、祭壇の影から黒い影が現れた。それは巨大な獣の姿で、鋭い牙と爪を持ち、赤い目を燃やしていた。神域を守護するモンスターだったのだ。
「敵だ!」ラーンの叫びが響き渡る。彼は剣を振りかぶり、獣に襲いかかった。イシェも短刀を抜き、テルヘルは冷静に魔法の呪文を唱えた。激しい戦いが始まった。