ビレーの広場には、今にも弾けそうな活気が溢れていた。祭りの準備で人々は忙しそうに動き回り、露店の屋台からは美味しそうな匂いが漂ってくる。ラーンはイシェに「今年は一体どんな大穴が出るんだ?」と目を輝かせながら尋ねた。イシェは「そんなもの、毎年同じじゃないか」と呆れながらも、どこか嬉しげな表情を浮かべていた。
テルヘルはそんな二人を見下ろしながら、酒場に足を踏み入れた。騒々しい店内に、彼女の冷たい視線は鋭く突き刺さる。カウンター越しにバーテンダーに酒を要求すると、そっと口元に手を当てて言った。「ヴォルダン情報、何か入ってるか?」
バーテンダーは怪訝な顔で首を横に振った。「最近、ヴォルダン方面は静かだな。あの大国が祝祭の準備に追われているという噂もあるぞ」
テルヘルは眉間に皺を寄せた。ヴォルダンは祝祭に力を注ぎ込む一方で、自分の復讐計画を遅らせる理由はないはずだ。何か裏があるに違いない。彼女は酒を一口飲み干すと、立ち上がった。「準備はいいか?次の遺跡へ行くぞ」
ラーンとイシェはすでに広場を出て、遺跡へと向かう道に立っていた。二人は祭りの余韻を楽しみながら、いつものように軽快な会話を交わしていた。しかし、テルヘルの鋭い視線は、彼らにも向けられることはなかった。彼女はただ、復讐への執念を胸に秘め、二人を遺跡へと導く影のように続いた。