「よし、今日はいい感じだぞ！」ラーンがそう叫び、錆びた扉を蹴飛ばした。埃っぽい空気が充満する遺跡内部に、イシェは眉間に皺を寄せながら続く。
「また大口叩いてるわね。いつになったらその『大穴』が見つかるんだか…」
「お前が言うな、イシェ！あの遺跡調査報告書見ただろ？ここには古代の王墓があるって書いてあったぞ！」ラーンは興奮気味に剣を構えながら言った。
イシェはため息をつきながら懐からランプを取り出した。「王墓なんて大げさな… ただの古い棺と埃が積もった部屋だろう」
「そうじゃねえ！王墓には宝が眠ってるって聞いたぞ！金貨、宝石、それに…」ラーンの目は輝きを増す。
「それに？」
「それに、伝説の武器だってな！」
イシェは呆れたように目を回した。ラーンの妄想は尽きることがない。だが、彼の熱意に引っ張られるように、イシェもまた遺跡の奥へと足を踏み入れた。
その時、背後から冷たい声が響いた。「宝探し？面白いですね」
ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の鋭い視線が二人を貫いている。
「テルヘル、お前も来たのか？」ラーンの顔色が明るくなった。「何か情報でも掴んだか？」
「情報というより…」テルヘルは薄く微笑んだ。「この遺跡に隠された真実は、あなたが思っている以上に大きいでしょう」
彼女はゆっくりと歩みを進め、遺跡の奥へと消えていった。ラーンの目は輝きを増し、イシェは不安げに彼を見つめた。
「さあ、イシェ！大穴を掘り当てて祝杯をあげるぞ！」ラーンは剣を抜き、テルヘルの後を追った。イシェはため息をつきながら、彼らを追いかけるように遺跡の奥へと入った。