ラーンが巨大な石扉を押す力は、いつもより弱々しく感じた。イシェの視線を感じて顔を上げると、彼女は眉間に皺を寄せていた。「大丈夫か?」と尋ねると、ラーンは苦笑いした。「ああ、疲れただけだ。少し休もう」
彼らの足は、遺跡の奥深くへと続く階段を何時間も登ってきた。いつもならラーンの軽快な足取りにイシェが追いかけるように進むものだが、今日は二人の息づかいだけが、湿った空気にこだましていた。石畳の上には、まるで祈りを捧げるかのように、イシェが拾い集めた小さな水晶が散りばめられていた。
「何かあったのか?」ラーンの問いに、イシェは小さく頷いた。「あの日、ヴォルダンから逃げてきた時、この水晶を握りしめていたんだ。あの時、私は…」彼女は言葉を濁した。「ただ、何か…希望をくれるような気がして」
ラーンの視線は、イシェの握り締めた手に注がれた。水晶は、かすかに光り輝いていた。「お前の祈り、きっと届くぞ」とラーンは言った。彼の言葉は、いつもより少しだけ重かった。
彼らは扉の前に立ち止まり、息を深く吸い込んだ。扉を開けば、未知の空間が広がっているはずだ。そして、そこに眠るかもしれない宝物、そして危険も。イシェは水晶を握りしめ、静かに目を閉じた。ラーンは、彼女の祈りに耳を傾けながら、扉を押した。
扉が開けた瞬間、彼らを襲ったのは blinding lightだった。