ラーンの豪快な笑い声がビレーの市場を駆け巡った。イシェは眉をひそめて通り過ぎる人々の視線を感じた。今日の遺跡探索で手に入れた遺物は、期待したほど価値がなかったのだ。
「また大穴見つけたって言うなよ、ラーン。」イシェはため息をつきながら言った。「あの剣、一体何に使うんだ?」
ラーンは大きな剣を肩に担いで、満足そうに笑った。「いつか必ず役に立つさ!もしかしたら、この剣でヴォルダン軍を蹴散らす日が来るかもしれないぞ!」
イシェは苦笑した。ヴォルダンに対する憎悪は、テルヘルが常に口にすることだが、ラーンにはまだ理解できない。彼はただ冒険と興奮を求めているだけだ。
「それより、今日の報酬はどうするんだ?また酒に消すのかい?」
ラーンの顔色が少し曇った。「いや、今回は違う。新しい装備を買いたいんだ。もっと深く潜れるように。」
イシェはラーンの目をじっと見た。「あの遺跡の奥には危険な場所があると聞いたぞ。無理しないでほしい。」
「大丈夫だ、イシェ。俺には仲間がいるだろ?」ラーンはテルヘルの方を見つめた。彼女はいつも冷静に状況を判断し、必要な情報を提供してくれる。
テルヘルは薄暗い目を細めて言った。「次の目標は、あの山脈にあるという古代都市だ。そこには、我々が探し求めるものがあるはずだ。」
イシェは不安を感じた。テルヘルの目的は何か?彼女は一体何を欲しているのか?そして、その目的のために、彼らをどんな危険な場所に連れて行くつもりなのか?社会の闇が、彼らの前に広がる影のように迫ってくる。